降りしきる雨が屋根を叩いている。
こんな日は、どうしても思い出してしまう。

「貴方のその優しさが、私を傷付けるの」

優しさが時には凶器になり得ると、君は教えてくれたよね。

「くそったれ!」

君が去った後、僕は一人吠えた。

そして僕は気付いた。
僕が君を愛せていなかった事に。

僕は必死に彼女を愛そうとした。
しかし、それは愛せていなかった事の裏返し。

人を愛するには必死にならなくともいいのだ。
みんな自然に誰かを好きになり、誰かを愛し、そして、その誰かから愛されもするのだろう。

必死になってしまう僕には誰かを愛する資格はないのかもしれない。
そして愛する資格がないのであれば、誰かから愛される事もないのだろう。

そう思った途端、僕の中に寂しさが満ちてきて、涙と共にその寂しさが溢れて出てきてしまう。

そして僕は雨の中、傘もささずに街中へと向かう。
雨が涙と入り混じり、僕の体を包み込む。

周囲からの視線が痛々しく感じるが、さほど気にはならない。
雨が僕をコーティングしてくれて、世界との距離を適度に保ってくれている様だ。

近からず、遠からず。

抱えきれない程の寂しさを抱えて街中へと向かう僕は、決して誰かとの出会いを求めている訳ではない。
寧ろ、誰かから話し掛けられても困るくらいである。

だから近寄り難い雰囲気を醸し出しながらも、わざわざ人のいる街中へ行くという矛盾した存在になる。

愛そうとすればする程、愛する事が出来ない自分。
寂しさから逃げ出そうとしながらも、自ら孤独を招いてしまう自分。
そんな自分が嫌で、そんな自分を嫌いになりきれないでいる自分。

まるで自分が矛盾の塊のように思えてくる。

しかし降りしきる雨がそれら全ての矛盾を肯定して、ともすれば、この世界から脱落しそうになる僕を寸前で受け止めてくれている様にも感じる。

そう考えると、この雨がこの世界と僕を繋いでいる、唯一のもの。
そんな風にも思えるのです。

そして僕はそんな『雨』に一言を捧ぐ。

「ありがとう」

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